1数学的基礎
(a)オイラーの回転軸
(b)方向余弦行列
例
2.応用編
フレームマトリックス法
2
:座標変換
(a)オイラーの回転軸
任意の基準座標系を
A
,ある剛体に固定された座標系を
B
とする。
A
と
B
の両者に固定されたある軸のまわりに
B
を回転させることで,剛体を任意の姿勢に変更できる。
逆に言うと,回転前後の姿勢が与えられたとするとき,これを関連付ける回転軸が唯一定まる。 これをオイラー軸と呼び,またこのような定理を回転に関するオイラーの定理という。
A
に固定された任意のベクトルを
a
,
B
を回転させる前の状態において
a
と一致し,
B
に固定されたベクトルを
b
,オイラーの回転軸を
λ
,その軸のまわりの回転角を
θ
とするとき,
次の式が成り立つ。
b
=
a
cos
θ
−
a
×
λ
sin
θ
+
a
・
λλ
(1−cos
θ
) (2.1)
また,回転ダイアディック
C
=
U
33
cos
θ
−
U
33
×
λ
sin
θ
+
λλ
(1−cos
θ
) (2.2)
を定義すれば, (2.1)式は次のように書き換えられる。
b
=
a
・
C
(2.3)
導出:
A
系に固定されたベクトル
α
1
,α
2
を考え,
λ
と組で {
α
1
α
2
λ
}が正規直交基底をなすものとする。
B
系に固定されたベクトル
β
1
,β
2
を考え,
λ
と組で {
β
1
β
2
λ
}が正規直交基底をなすものとする。ただし,B系を回転させる前の状態において,
β
1
,β
2
は,それぞれ
α
1
,α
2
と一致するものとする。 すなわち,
θ
=0において,あるスカラー量p
1
,p
2
,p
3
を用いて,
a
= p
1
α
1
+p
2
α
2
+p
3
λ
(2.4)
b
= p
1
β
1
+p
2
β
2
+p
3
λ
(2.5)
が成り立つ。一方 回転後の
β
1
,β
2
は,
α
1
,α
2
の線形結合として
β
1
= cos
θ
α
1
+cos(
θ
−π/2)
α
2
= cos
θ
α
1
+sin
θ
α
2
(2.6)
β
2
= cos(
θ
+π/2)
α
1
+cos
θ
α
2
=−sin
θ
α
1
+cos
θ
α
2
(2.7)
として書き表される。 従って,
b
= p
1
(cos
θ
α
1
+sin
θ
α
2
)+p
2
(−sin
θ
α
1
+cos
θ
α
2
)+p
3
λ
= (p
1
cos
θ
−p
2
sin
θ
)
α
1
+(p
1
sin
θ
+p
2
cos
θ
)
α
2
+p
3
λ
(2.8)
また,は次のように展開できる。
a
・
C =
a
cos
θ
−
a
×
λ
sin
θ
+
a
・
λλ
(1−cos
θ
)
=(p
1
α
1
+p
2
α
2
+p
3
λ
)cos
θ
−(p
1
α
1
+p
2
α
2
+p
3
λ
)×
λ
sin
θ
+(p
1
α
1
+p
2
α
2
+p
3
λ
)・
λλ
(1−cos
θ
)
=p
1
cos
θ
α
1
+
p
2
cos
θ
α
2
+p
3
cos
θλ
+p
1
sin
θ
α
2
−p
2
sin
θ
α
1
+p
3
λ
−p
3
cos
θ
λ
=(p
1
cos
θ
−p
2
sin
θ
)
α
1
+(p
1
sin
θ
+p
2
cos
θ
)
α
2
+p
3
λ
(2.9)
従って,
b
=
a
・
C
(2.10)
(b)方向余弦行列
任意の2つの正規直交座標ベクトルを
{a}
T
={a
1
a
2
a
3
},
{b}
T
={b
1
b
2
b
3
}とするとき,方向余弦と呼ばれる9つのスカラー量は
C
ij
=
a
i
・
b
j
(i,j=1,2,3) (2.11)
により定義する。 このとき,
{
b
}
T
= {
a
}
T
A
C
B
(2.12)
{
a
}
T
= {
b
}
T
(
A
C
B
)
T
(2.13)
が成り立つ。 ただし
これを,{b}から{a}への方向余弦行列あるいは座標変換行列という。
方向余弦行列の性質として,以下のようなものがある。
C
−1
=
C
T
(2.15)
C C
T
=
C
T
C
=
U
33
(2.16)
(
B
C
A
)
−1
= (
B
C
A
)
T
=
A
C
B
(2.17)
方向余弦行列により,異なる基底ベクトルに対する座標成分の変換が行われる。例えば,任意のベクトル
r
の{
a
}系での座標を
A
r
= [
A
r
1
A
r
2
A
r
3
]
T
(
A
r
i
=
r
・
a
i
(i=1,2,3)),{
b
}系での座標を
B
r
= [
B
r
1
B
r
2
B
r
3
]
T
(
B
r
i
=
r
・
a
i
(i=1,2,3))とすれば,
B
r
=
A
r
A
C
B
(2.18)
が成り立つ。
同様に,任意のダイアディック
D
の{
a
}系に対応する正方行列を
A
D
(
A
D
ij
=
a
i
・
D
・
a
j
(i,j=1,2,3),
{
b
}系に対する正方行列を
B
D
(
A
D
ij
=
b
i
・
D
・
b
j
(i,j=1,2,3),とすれば,
B
D
= (
A
C
B
)T
A
D
A
C
B
(2.19)
が成り立つ。
A系からB系への方向余弦行列を
A
C
B ,
A系からB’系への方向余弦行列を
A
C
B’
,B’系からB系への方向余弦行列を
B’
C
B
とするとき,次式が成り立つ。
A
C
B
=
A
C
B
’
B’
C
B
(2.20)
例
グランドに固定されたグランド座標系を
A
とする。 移動するラグビーセンサのセンサシステム上のセンサー座標を
B
とする。
このとき,
B
上で計算された任意のベクトル
b
(例:加速度
a
および角速度
ω
)は,
A
座標系上のベクトル
a
との関係式として次のように表される。
b
i
=
a
i
・
C
(i=1,2,3)
a
=(
a
1
,
a
2
,
a
3
)
C
ij
=
a
i
・
b
j
=
a
i
・(
a
j
・
C
) (i,j=1,2,3)
C
ij
=
a
i
・(
a
j
cos
θ
−
a
j
×
λ
sin
θ
+
λλ
・
a
j
(1−cos
θ
))
=
a
i
・
a
j
cos
θ
−
a
i
・(
a
j
×
λ)
sin
θ
+
a
i
・
λλ
・
a
j
(1−cos
θ
))
λ
i
=
λ
・
a
i
=
λ
・
b
i
(i=1,2,3)
C
11
= cosθ+ λ
1
2
(1−cosθ)
C
12
=−λ
3
sinθ+λ
1
λ
2
(1−cosθ)
C
13
= λ
2
sinθ+λ
1
λ
3
(1−cosθ)
C
21
= λ
3
sinθ+λ
2
λ
1
(1−cosθ)
C
22
= cosθ+ λ
2
2
(1−cosθ)
C
23
=−λ
1
sinθ+λ
2
λ
3
(1−cosθ)
C
31
=−λ
2
sinθ+λ
3
λ
1
(1−cosθ)
C
32
= λ
1
sinθ+λ
3
λ
2
(1−cosθ)
C
33
= cosθ+ λ
3
2
(1−cosθ)
λ
が
a
i (i=1,2,3)と平行,すなわち,
b
iとも平行のとき,
λ
=
a
i=
b
iまわりの回転を表す方向余弦行列
C
i(θ)は次のようになる。
以上の数学的手段を利用して、実際のセンサが計測する座標系から,グランド座標への変換を考える。